[2022.06.13]
昨今、IT化により業務効率化が進んでいますが、勤怠管理においては依然としてタイムカードに手書きしている企業も少なくありません。それには「従業員数が少ない」「手書きは簡単に導入できる」「自動化はコストがかかりそう」などの理由が背景にあるようです。
確かに企業によっては、手書きであることにメリットを感じやすいものです。しかしその反面、改ざんリスクや保管・チェックの手間がかかるといったデメリットもあります。
そこで今回は、タイムカードの手書きをテーマに、違法であるかどうか、メリットやデメリット、効率化とコスト削減を図る勤怠打刻システムについて解説していきます。
従業員がタイムカードを手書きで記録することは違法になるのかどうか、企業にとっては気になるところです。結論、推奨されるものではありませんが、労働基準法に反しているわけではないため違法ではありません。
なぜタイムカードの手書きが違法とはならないのか、その理由や厚生労働省の見解、タイムカードの手書きを実施する上で覚えておきたいことを解説します。
中小企業などではタイムカードを手書きで記録していることも珍しくありません。しかし、手書きの勤怠管理は厚生労働省が推奨する「客観的な記録」に該当せず、非推奨である「自己申告制」にあたります。
厚生労働省は「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」にて、「使用者は、労働者の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し、適正に記録すること」としています。つまり、従業員の勤怠は客観的に確認できる方法で記録されるべきである、と明示しています。
この原則によるならば、手書きでタイムカードに勤怠情報を記録することは従業員による自己申告制であり客観的な記録とはなりません。つまり、タイムカードの手書きは厚生労働省としては非推奨の勤怠管理となります。
参考:労働時間の適正な把握 のために 使用者が講ずべき措置に関するガイドライン
前述した通り、タイムカードの手書きは労働基準法に反することにはならないため、違法となるものではありませんが、勤怠打刻システムの導入などを行って客観的な記録をする方が良いのは確かです。
とはいえ、様々な理由から勤怠情報をデータ管理するのが難しかったり、タイムレコーダーが故障した場合には、手書きにて記載・修正などの対応をしなければならなくなります。
ただし、タイムカードを手書きにすることは従業員による改ざんがしやすく、逆に企業側も従業員の勤怠を不当に管理しやすい状態にあります。もし改ざんや労働基準法違反となるような勤怠管理を行った場合は、違法であり罰せられますので注意しましょう。
手書きのタイムカードはそれ自体が違法とはなりませんが、改ざんなど違法につながる危険性もあります。そのため、自己申告制による勤怠管理を行うならば適切に確認できる仕組み作りが大切です。 まずはタイムカードを手書きする上で適切なルールを作り、改ざんが行われにくいようにするべきです。
例えば、「他人に書いてもらってはいけない」「修正しやすい鉛筆ではなくボールペンで記載する」「修正には上司の許可印が必要」といったものです。これらのルールを従業員に周知し、規則として記載しておくのがよいでしょう。
また、適切なタイミングで勤務実態の調査も行うのもオススメです。部署ごとに勤怠実態に関するヒアリングを行ったり、パソコンの使用履歴のチェックをしたり、入退室履歴を確認したりなどを行います。自己申告のみでは改ざんなどの不正ができてしまいますが、様々な角度から調査・確認を行えば、不正申告を見抜くことができます。また、こうした調査が行われることを周知すれば、不正の予防にもつながることでしょう。
客観的な勤怠管理が推奨される一方で、場合によってはタイムカードを手書きすることのメリットもあります。具体的にタイムカードの手書きにはどのようなメリットがあるのか解説していきます。
手書きによるタイムカードでの勤怠管理は、実施する上でコストがほとんどかからないことがメリットです。
とはいえ、このメリットはあくまでも従業員数が少ない中小企業の場合にのみ該当します。従業員数が増えれば手書きされたタイムカードが大量になることから管理工数が大幅にかかってしまい、人件費の増加につながってしまいます。また、不正がないか勤務実態調査をするのもかなりの時間が必要になることでしょう。
このような理由から、タイムカードの手書きは従業員数が少ないことを前提として、低コスト・導入しやすいというメリットがあるといえます。
タイムカードの手書きは厚生労働省からは推奨されない自己申告制の勤怠管理です。もちろん違法とはなりませんが、手書きで行うことによるデメリットも存在しています。具体的にどのようなデメリットがあるのか解説していきます。
タイムカードの手書きで最も注意したいのが改ざんです。
例えば、ある従業員が遅刻してしまいそうだったため仲の良い同僚に手書きしてもらった場合、本来は遅刻しているはずなのにタイムカード上では定時出社となってしまいます。他にも残業していないにも関わらず、後から書き換えて1時間の残業をしたことにするといった不正が行われる可能性があります。
このような勤怠情報の改ざんを防ぐためには、勤務実態の調査を行う、修正されたことがわかるようにボールペンで記載する、修正は上司の許可印が必要にするといったルール作りや取り組みを行うのがよいでしょう。
手書きされたタイムカードを管理するためには目視チェックが必要となります。従業員数が少なければ良いですが、従業員数が増えてくると大きな手間となることでしょう。
また目視チェックは人的ミスが起こるリスクが高く、正確な勤怠管理が行われない可能性もあります。もしミスが発覚した場合、他にも間違いがないか遡ってチェックしなければならず余計な手間を増やしてしまいます。
このように、手書きのタイムカードだと管理業務が非効率になりやすいといえるでしょう。
労働基準法によりタイムカードは5年間の保管義務があります。数枚のタイムカードであればそれほど場所も取りませんが、従業員が増えれば保管する場所も増やす必要があります。それに、火災や紛失リスクがあるため厳重な管理が求められます。
このように徹底した管理を行うためにはそれなりにセキュリティの高い保管場所を確保する必要があるだけではなく、スペースも必要ですからコストもかかり企業にとってはマイナスです。
手書きのタイムカードはリモートワークや現場へ直行直帰するスタッフの勤怠管理に対応し辛いのが欠点です。もちろん、タイムカードを持たせて現場で書かせるわけにもいきません。そうなると後日になってから従業員の勤怠状況を確認しなければならず、手間がかかります。
タイムカードの手書きは、従業員数が少ないならば良いですが、ある程度増えてくると前述したようなデメリットが目立つようになってきます。
それに労働時間の自己申告制は厚生労働省からも推奨されていないだけではなく不正・改ざんの恐れがあるため、手書きを実施し続けるメリットは多くないと言えます。効率的な業務を目指すためにも、手書きから勤怠打刻システムへの移行を検討するのがオススメです。
勤怠打刻システムとは、Web上で従業員の出退勤打刻による勤怠の登録や勤怠情報管理を行えるもののことです。
スマホやタブレットで打刻者を撮影する機能が付いているシステムもあるため、手書きの際に起こりうる他の従業員による不正打刻を防ぐことができます。加えてタイムカードとは異なり、打刻後に勤怠情報を容易に修正することができないため改ざんを防ぎやすくなります。
また、勤怠打刻システムはデータで勤怠情報を管理できるので、手書きの紙情報の保管場所で悩むことがなくなったり、勤怠情報を容易に集計できるので人的ミスが起こりにくくなり、業務の効率化につながります。
もちろん月々の運用コストはかかり、一般的な勤怠打刻システムでは従業員1人あたり50円~300円の利用料が相場となっています。
企業の規模によっては手書きの時よりコストがかさむ可能性はあるかもしれませんが、前述したメリットを享受できたり、勤怠打刻システムによる管理は厚生労働省が推奨する「客観的な記録」を実現できます。
手書きのタイムカードに不安を感じている、将来的に従業員数を増やしたいとお考えでしたらぜひ勤怠打刻システムの導入を検討しましょう。
タイムカードの手書きは違法ではありません。
従業員数が少ないならばコストもかからず容易に勤怠管理できるというメリットもあります。
しかしながら、今回ご紹介したようにタイムカードの手書きには不正や改ざんを始めとした様々なリスクがあります。そして従業員数が増えればチェックも滞り、担当者の業務を圧迫することでしょう。勤怠打刻システムはシステム上で打刻されるため、人為的なミスは発生しにくく、改ざんのリスクも少ないです。コストはかかるものの手書きと比べてメリットが数多く存在しているため、自社の業務効率化のためにも、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。