[2022.05.30]
タイムカードは従業員の勤怠状況を記録し、給与を決定する上での大切な情報のため、正しく記録され保管されなくてはいけません。
しかし中には、従業員がタイムカードを不正に改ざんするケースもあり、雇用側は賃金を水増し請求され損害となってしまいます。
今回はタイムカード改ざんとはどのような罪になるのか、改ざんが発覚した場合の対処法、タイムカード改ざんを防止する方法について解説いたします。
従業員の出勤時間や退勤時間は賃金を決定する上で重要な情報であり、正確に記録されていなければいけません。タイムカードはそんな重要な情報である従業員の勤怠情報を記録するアイテムです。
しかし残念なことに、賃金を不正に入手するためにタイムカードを改ざんする事例が多く発生しています。もちろん金銭に関わることなので違法となります。
実際にどのような罪に該当する可能性があるのか、いくつかご紹介します。
タイムカードの改ざんは詐欺罪にあたる可能性があります。勤務時間を水増しすれば、時給や残業代が余計に発生するためです。つまり、従業員が会社を騙して不正に金銭を得たという形になります。
詐欺罪として成立した場合は10年以下の懲役に処せられることになります。
タイムカードの改ざんは私文書偽造罪にあたる可能性があります。タイムカードを改ざんするということは、書類を偽造することになるためです。
私文書偽造罪は紙に出力するタイムカードの場合に適用され、1年以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられます。
タイムカードに記録されている労働時間をデータで保存をしていて、そのデータを改ざんした場合は電磁的記録不正作出罪にあたる恐れがあります。労働時間が保存されているデータを改ざんすることは、事実証明に関する電磁的記録の不正を行ったと判断されるためです。
もしこの罪に該当した場合は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。
タイムレコーダーなど労働時間を改ざんするために物品を壊した場合は、器物破損罪に該当するかもしれません。
器物破損罪に該当したならば、3年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、科料が科せられます。科料とは1000円以上1万円未満の金額のことを指します。
タイムカードの改ざんは違法であり、詐欺罪などに該当する可能性があります。万が一、タイムカードの改ざんが発生した場合どのように対処すべきなのか、その方法をご紹介します。
タイムカードの改ざんが発覚したならば、改ざんを立証するための客観的な証拠を押さておく必要があります。
例えば、業務用PCの使用履歴、他従業員の証言、防犯カメラの映像、その他機械の稼働記録などがあげられます。
これらはタイムカード改ざんを立証するための大切な証拠となりますので、できる限り集めるようにしましょう。また、証拠隠滅を避けるために改ざんを行った従業員に知られないように行うことも大切です。
タイムカード改ざんの証拠を集めたならば、改ざんを行ったと思われる従業員に事実確認を行いましょう。その際には集めた証拠を提示してください。
また、やり取りの記録はボイスレコーダーに保管しておくことをおすすめします。裁判が行われた場合に重要な証拠となるためです。
初犯かつ、被害の少ない改ざんであった場合は口頭注意のみで済ませるのも考え方のひとつです。ことを荒立てたくないということもありますが、従業員を処分するにはそれなりの準備や時間が必要となるためです。
口頭注意であれば、その場で時間をかけずに穏便に済ませることが可能です。職場の雰囲気や人間関係をひとまず平穏にしておきたい場合は選択しても良いかもしれません。もちろん、企業に重大な損害を与えたと認められる場合は裁判することを選択するのがよいでしょう。
タイムカード改ざんを行った従業員に対して、社内のルールに従って処分を行いましょう。
その中でも懲戒処分を行う場合は、就業規則に沿って行うことが大切です。また、懲戒解雇をいきなり求めてしまうと、解雇無効の裁判を起こされる可能性も少なからずありますので、就業規則に沿った上で戒告・減給・降格など段階を追って行った方が無難です。
タイムカードの改ざんが発生したら弁護士・社労士に相談するのも良いでしょう。法律の専門家に相談することでどう対処すべきか正しいアドバイスを貰えるためです。
顧問弁護士はもちろん、外部弁護士に相談を依頼することもできます。いずれにせよ、素人判断で対処していくのではなく、専門家のアドバイスを受けて対処した方が大きな問題に発展しにくいためおすすめです。
ケースによっては裁判を行い、しっかりと解決した方が良い場合もあります。
例えば、タイムカードの改ざんが組織的で大掛かりであったり、被害額があまりに大きかったりする場合です。従業員がまったく反省せず何度も繰り返す、返金がされないといったケースでも裁判を検討しても良いかもしれません。
裁判を起こす場合、タイムカード改ざんという社内での違法行為が外部に漏れることが懸念されますが、解決することで不正に対して厳格に対応できる会社と評価されることでしょう。メリット・デメリットはありますが、それらを踏まえた上で裁判を起こすか検討してください。
タイムカードの改ざんは未然に防ぐことが何よりも大切です。
具体的にどのような防止策があるのか、いくつかご紹介いたします。
タイムカードの改ざんを防ぐ方法として有効なのが、保管を厳重に行うことです。
デスクや棚など誰が触れてもおかしくないような場所にタイムカードが放置されていると改ざんを許してしまいやすいです。タイムカードそのものはお金ではありませんが、改ざんにより金銭を生み出せるものである以上、厳重に保管しなくてはなりません。
例えば、金庫や鍵のかかるキャビネットなど、物理的に手が出せないところにタイムカードを保管しましょう。
複数人でタイムカードの管理を行うことも改ざんを防ぐ有効な手段です。
タイムカードに限ったことではありませんが、管理を一人だけで担当していると管理方法の欠点や穴が見えにくくなります。また、注意する人がいないため管理が適当になってしまう可能性も考えられます。そのような理由から、タイムカードは複数人で管理することがおすすめです。
また、カギの管理は、役職者や責任者など、権限のある特定人にのみ絞るとよいでしょう。複数人で管理すれば管理状況を相互監視できますし、欠点も見えやすくなります。
タイムカード改ざんの問題性や違法性を従業員に周知することも大切です。
「タイムカードの改ざんは悪いこと」それは誰もが分かっていることです。しかし、その重大性については理解されていないのではないでしょうか。軽い気持ちで改ざんを行い、発覚後に「まさか詐欺罪になるなんて…」「懲戒処分を受けるなんて…」とその罪の重さを知るケースも少なくありません。
タイムカード改ざんは犯罪であり、最悪の場合は懲戒処分や刑事告訴を受けることを従業員に理解させるようにしましょう。
タイムカード改ざんの禁止や罰則を就業規則に明記しておくことも改ざん防止につながります。
タイムカードの改ざんは会社に損害を負わせる行為であり、詐欺罪などの罪になる可能性があるものです。それだけ重大な問題であることを、社員教育で周知させることはもちろん、就業規則に明記して誰もが知っている情報であるようにしましょう。
紙のタイムカードから打刻システムに変更することも改ざん防止につながります。
紙のタイムカードは容易に改ざんすることができます。犯罪であるのに改ざんされることが少なくないのは、その容易さが理由のひとつです。
打刻システムであれば簡単に打刻時間を書き換えることはできません。打刻時に、打刻者の顔写真が撮れるものもあるため、他の従業員が本人に代わって打刻するといったことも防げます。
タイムカードの改ざんは、詐欺罪などに該当する違法行為であることを正しく理解できてなく、軽い気持ちで実行してしまうケースが多いです。
もし、タイムカードの改ざんが発生してしまった場合は、速やかに正しく対処していきましょう。改ざんが起こらないようにするには、事前に防止策を講じることが大切です。厳重な保管や複数人での管理、打刻システムの導入など労働環境にあった方法をお試しください。